映画『博士の愛した数式』と原作について
原作がよくても映画を見て失望することが多い。だから過剰な期待をしないで見たのだが、映画が始まってすぐにこれはよい映画だと確信した。
成長して中学の数学教師になったルートが教室で生徒に向かって博士の話をするというアイデアが成功しているし、キャスティングもよかった。脚本が上手いのにも感心した。これを書いたのは小泉堯史監督だ。この監督はただ者ではないと思って調べたら、監督デビューは2000年だが、その前に黒沢明監督の下で28年間も助監督をしている。どうりで上手いわけだ。監督としてのキャリアは浅いが、映画を知り尽くしているという印象を受けた。
原作と比べると細部が違っているが、それは原作と違う話にするためではなくて、原作をよりわかりやすく伝えるためだ。小説とは表現方法法が違っても、原作の意図や雰囲気はそこなわれていない。この映画を見たことで原作の理解がより深まった気がする。文芸映画とはこうあるべきという見本のような映画だ。
原作には印象に残る言葉がいくつもあるが、映画でも効果的に使われていた。
博士「君の靴のサイズはいくつだね」
杏子「24、4の階乗です」
博士「ほう。それはじつに潔い数字だ。ま、とにかく上がってくれたまえ」
毎朝儀式のように繰り返されるこの会話が心地よい。
この映画は原作を読まなくても楽しめるが、原作を読んで見た方がより楽しめると思う。
博士の愛した数式/小川洋子著
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